30秒で理解
CAC(Customer Acquisition Cost)は、新しい顧客を1人増やすために平均いくら使ったかです。広告のクリック単価ではなく、営業・マーケティングの費用を新規顧客数で割ります。
魚を1匹釣るまでに使った餌代と道具代を、釣れた魚の数で割るイメージです。広告費だけを数えると餌代しか見ない計算になります。人件費や計測ツールなど、獲得のために使った費用をどこまで含めるかを先に決めておくと、月ごとの比較が崩れません。
計算式と計算例
基本式は、対象期間の顧客獲得費用を、その期間に増えた新規顧客数で割ります。Shopify と HubSpot も、営業・マーケティング費用を新規顧客数で割る形で説明しています。
| 1か月の項目 | 金額・人数 |
|---|---|
| 広告費 | 120,000円 |
| 獲得用の制作費・ツール費 | 60,000円 |
| 営業の獲得活動に配分した費用 | 120,000円 |
| 新規顧客数 | 30人 |
| CAC | (120,000 + 60,000 + 120,000) ÷ 30 = 10,000円 |
広告費だけで計算すると4,000円ですが、獲得に必要な費用を含めるとCACは10,000円です。比較する月やチャネルで、分子に入れる費用の範囲と分母の「新規顧客」の定義をそろえます。
この数字が表すもの
CACが答えるのは、顧客を増やす活動が平均いくらかかっているかです。顧客が将来いくら売上や利益を生むかまでは、CAC単体では分かりません。
| CACと一緒に見る数字 | 分かること | 次に開く場所 |
|---|---|---|
| 顧客あたりの売上 | 1人の初回購入がCACを上回るか | EC・請求の売上レポート |
| 顧客の継続購入 | 初回後も回収できる可能性があるか | 顧客コホート/リピート購入レポート |
| CPA | 特定キャンペーンの成果1件にいくらかかったか | 広告管理画面のキャンペーン別レポート |
| CAC | 営業・マーケティング全体で顧客1人にいくらかかったか | 会計データと顧客データを同じ期間で集計 |
たとえば、キャンペーンのCPAが低くても、購入に至らないリードが多ければCACは下がりません。CPAは施策単位、CACは顧客獲得全体という切り分けで見ます。
場面によって意味が変わる
同じCACでも、分子に何を入れるか、分母を誰と数えるかで意味が変わります。まず集計単位をメモしてから数字を比較します。
| 集計の切り口 | 分子に入れる費用 | 分母 | 向いている判断 |
|---|---|---|---|
| 全社のCAC | 営業・マーケティングの獲得関連費用 | 全チャネルの新規顧客 | 事業全体で獲得費用を吸収できているか |
| チャネル別CAC | そのチャネルの広告・制作・運用費 | そのチャネル経由の新規顧客 | 予算をどのチャネルへ移すか |
| キャンペーン別CAC | キャンペーンに直接ひもづく費用 | そのキャンペーン経由の新規顧客 | 継続・停止・作り直しの判断 |
| 初回購入CAC | 初回購入を生むための費用 | 初めて購入した顧客 | リピート顧客を除いた獲得効率の確認 |
全社のCACと広告管理画面のCPAを同じものとして扱わないでください。チャネル別に見るときも、広告費だけの比較なのか、制作費や担当者の工数まで配分した比較なのかを列名に残します。
高いときに、次にやること
CACが高いという結果だけで広告を止めると、原因を取り違えます。まず同じ期間・同じ顧客定義で、費用と顧客数のどちらが動いたかを確認します。
| 確認順 | 開く場所 | 画面で見ること | 次の操作 |
|---|---|---|---|
| 1 | 会計・広告費の月次一覧 | 前月より獲得関連費用が増えたか | 増えた行をチャネル名・キャンペーン名で分ける |
| 2 | 顧客/注文レポート | 新規顧客数が減ったか | 「初回購入」または「新規顧客」の条件で期間を固定する |
| 3 | 広告管理画面のキャンペーン一覧 | 費用、購入数、CPAのどれが悪化したか | 購入数がゼロのキャンペーンを停止候補として印を付ける |
| 4 | ランディングページと購入導線 | クリック後の離脱や入力エラーが増えたか | 該当ページのフォーム・決済エラーを1件ずつ確認する |
| 5 | チャネル別の集計表 | 高いチャネルが全体を押し上げているか | 顧客数と粗利を添えて、予算変更の候補を1つに絞る |
判定がついたら、広告管理画面のキャンペーン別レポートで「費用」「購入数」「CPA」を並べ、費用だけ増えて購入数が増えていない行を開きます。そこで配信対象、広告、遷移先の順に確認します。
低いときに、次にやること
低いCACは良い兆候ですが、安い顧客を増やしただけの可能性もあります。新規顧客数だけでなく、初回購入額とその後の購入状況を同じ顧客群で確認します。
| 状態 | 見るデータ | その場で行うこと |
|---|---|---|
| CACが下がり、顧客数も増えた | チャネル別の新規顧客数 | どのチャネル・キャンペーンから増えたかを保存する |
| CACが下がったが、初回購入額も下がった | 初回注文の売上・商品 | 値引きや低価格商品の比率を確認する |
| CACが低いが、継続購入が少ない | 初回購入月ごとのリピート率 | 顧客コホートを開き、獲得元ごとに並べ替える |
| 全体CACだけが低い | チャネル別CAC | 高いチャネルの顧客数と粗利を確認して平均の偏りを探す |
低い状態をそのまま拡大する前に、顧客コホートで「初回購入月」と「獲得チャネル」を指定します。継続購入が確認できる顧客群なら、その群を生んだキャンペーンの予算上限を1段階だけ上げて変化を記録します。
注意点
CACは、計算条件を変えた数字同士を比べると判断を誤ります。対象期間、新規顧客の定義、費用に含める人件費・制作費・ツール費、売上か利益かのどれを組み合わせるかを表の先頭に固定してください。
| 落とし穴 | 何が起きるか | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 広告費だけを分子にする | 実際より安いCACになる | 獲得に直接使った営業・制作・ツール費を含める基準を決める |
| リード数を分母にする | 顧客ではなく見込み客のコストになる | 新規顧客数を分母にする。リードの分析はCPAやCPLで分ける |
| 全社平均だけを見る | 高いチャネルと低いチャネルが隠れる | チャネル・キャンペーン別にも同じ式で集計する |
| 売上だけで回収を判断する | 商品原価や提供費を無視する | CACと粗利、顧客の継続購入を同じ顧客群で見る |
| 期間をまたいで割る | 広告費と購入の発生時期がずれる | 月や四半期を固定し、集計条件を記録する |
最後に見る画面は、会計の獲得関連費用一覧と顧客レポートです。両方を同じ期間に固定し、チャネル別に「費用 ÷ 新規顧客数」を1行ずつ計算すると、次に予算を確認する場所が決まります。