指標

LTV/CACユニットエコノミクス

顧客が生涯にもたらす価値(LTV)を、1人の顧客を獲得する費用(CAC)で割った比率です。顧客獲得に使ったお金を、長期の粗利で回収できるかを確認します。

計算式 LTV ÷ CAC

30秒で理解

LTV/CACは、顧客1人から得る価値が、獲得費用の何倍あるかを見る比率です。 LTVが3万円、CACが1万円なら、LTV/CACは3.0倍(3:1)です。

広告の費用対効果だけでなく、営業費用や顧客の継続期間まで含めて「その顧客を取りに行く経済性」を見る数字です。売上をそのままLTVに入れるか、原価などを引いた粗利をLTVに入れるかで結果が変わるため、計算方法を固定して使います。

魚を1匹釣るための餌代と、その魚から得られる収穫を比べる数字です。収穫が餌代の3倍でも、船の燃料代を含めていなければ、実際の利益とは一致しません。

計算式と計算例

基本式は「LTV ÷ CAC」です。LTVとCACの集計期間、顧客の定義、費用の範囲を揃えてから割ります。CACは、同じ期間の販売・マーケティング費用を新規有料顧客数で割る方法が基本です。

項目数値計算
月額売上5,000円1顧客あたり
継続期間12か月実績または仮定
LTV(売上ベース)60,000円5,000円 × 12か月
販売・マーケティング費用300,000円1か月分
新規有料顧客数10人同じ1か月に獲得
CAC30,000円300,000円 ÷ 10人
LTV/CAC2.0倍60,000円 ÷ 30,000円

この例は売上ベースの簡易計算です。粗利ベースで見るなら、月額売上5,000円から顧客への提供に直接かかる費用を引いてLTVを作ります。Stripe も、LTVとCACを比べるときは、獲得費用の集計範囲と期間を揃えることを説明しています。

この数字が表すもの

LTV/CACが表すのは、顧客獲得投資の長期的な回収余力です。比率が1倍未満なら、計算に入れたLTVだけではCACを回収できません。1倍を超えていても、固定費やキャッシュがすぐ戻るとは限らないため、単独で黒字判定はできません。

比率読み方次に見る数字
1.0倍未満LTVがCACに届いていない継続率、粗利、チャネル別CAC
1.0〜3.0倍未満回収余力はあるが、費用や前提の確認が必要CAC回収期間、顧客セグメント別LTV
3.0倍以上SaaSで使われる参考水準に届く場合がある成長投資の余地、計算前提の妥当性

Stripe は SaaS の参考値として3:1を挙げていますが、業種・成長段階・粗利率で意味は変わります。CFIも3倍超を一般的な目安としながら、固定費や変動する継続率・獲得費用を別途考慮する必要があると説明しています。

場面によって意味が変わる

同じ比率でも、LTVとCACの作り方が違えば比較できません。特に、広告だけのCACと営業人件費を含むCACを混ぜると、チャネルの優劣を誤って判断します。

場面LTV/CACを作るときの揃え方比較を避ける組み合わせ
サブスクリプション同じプラン・顧客群で、月次売上または粗利と継続率を使う月次LTVと年次CACをそのまま比較する
EC・単発購入購入頻度、リピート期間、商品原価を含める初回売上だけのLTVと、リピート込みのCACを比べる
B2B営業営業・マーケティング費用と契約顧客数の期間を揃える広告費だけのCACと、営業込みの顧客LTVを比べる
チャネル比較検索広告、紹介、営業などを分けて同じ式で計算する全チャネル平均CACを各チャネルのLTVに使う

売上ベースのLTVは、粗利率が低い商品ほど実際の回収力を大きく見せます。経営判断に使うときは、まず売上ベースで全体像を出し、その後に粗利ベースで同じ顧客群を再計算します。

低い・高いときに、次にやること

まず比率を直す前に、数字が同じ条件で作られているかを確認します。

状態最初に開く画面・表具体的な操作
比率が1倍未満顧客・売上分析のコホート表獲得月とチャネルで絞り、3か月・6か月の累計粗利を並べる。LTVの仮定だけが高くないか確認する
比率が低下広告・営業のチャネル別レポート直近期間と前期間でCACを並べ、新規有料顧客数と費用のどちらが変わったかを見る
LTVが低い継続率・解約率のコホート表プラン別に解約月を数え、最初の利用月から解約までの期間を確認する
比率が高すぎる費用集計表広告費だけでなく営業人件費、制作費、計測ツール費を同じ期間に足し戻す

変更する順番は、①LTVとCACの集計期間、②売上か粗利か、③顧客セグメント、④費用の範囲です。4つを揃えた後も1倍未満なら、チャネル別レポートでCACが高い順に並べ、停止・訴求変更・対象顧客の絞り込みの候補を確認します。3倍を超えていても、同じレポートで費用の漏れを点検してから拡大額を決めます。

「高いから良い」「低いから広告を止める」と即断しないでください。高い比率は獲得費用の漏れやLTVの過大な仮定でも起きます。低い比率も、長い契約の顧客を短期間の売上だけで評価している可能性があります。

注意点

LTV/CACは将来の顧客価値を含む推計値です。実績が十分でない場合は、観測期間と仮定を明記し、月次で実績と予測の差を確認します。

落とし穴なぜ危険か確認する場所
売上をLTVにして粗利を見ない原価・提供費用を回収できるか分からない商品別の粗利表
平均値だけで判断する高LTVの顧客が低LTVの顧客を隠すコホート・プラン・チャネル別の表
継続率を一定と仮定する実際には利用月数で解約率が変わる月次の継続率・解約率表
費用の期間がずれるCACだけが高く、または低く見える会計期間と広告・営業レポート
比率だけを見る現金回収の速さは分からないCACの回収期間と月次粗利

最後に確認する場所は、顧客セグメント別の損益表です。そこにLTV、CAC、粗利、継続率、獲得日が同じ条件で並んでいなければ、まず集計条件を揃えてから比率を読み直します。

一次情報

普遍的な内容なので、定期の見直し対象にしていません。