30秒で理解
MERは、事業全体の売上が、マーケティング費用全体に対して何倍あるかを見る指標です。 チャネルごとに売上を割り当てるのではなく、決めた期間の総売上高と総マーケティング費用をまとめて比べます。
「どの広告がこの注文を取ったか」を細かく判定する指標ではありません。広告、SEO、メール、インフルエンサーなどを含む全体の支出と売上を、同じものさしで見るための数字です。
個別のレシートではなく、店全体の一日の収支を見るメーターです。どの商品がどの看板を見て売れたかまでは分かりませんが、看板や販促に使った費用に対して、店全体の売上がどう動いたかを確認できます。
計算式と計算例
計算式は次のとおりです。
MER = 総売上高 ÷ 総マーケティング費用
ここで重要なのは、分子と分母の期間・範囲をそろえることです。費用に広告費だけを入れるなら毎回広告費だけにし、制作費やツール費、代理店費なども入れるなら毎回同じ範囲にします。
| 項目 | 仮の集計値 |
|---|---|
| 同じ月の総売上高 | 1,200,000円 |
| 同じ月の総マーケティング費用 | 300,000円 |
| MER | 1,200,000 ÷ 300,000 = 4 |
この例では、マーケティング費用1円に対して、全体で4円の売上があったと読みます。利益が4円残るという意味ではありません。商品原価、決済手数料、人件費などを引いていないため、採算の判定には利益率も必要です。
この数字が表すもの
MERが表すのは、マーケティング活動全体と売上の「対応関係」です。高ければ費用に対する売上が大きく、低ければ費用が売上の伸びに対して重くなっています。
ただし、MERだけではマーケティングが売上を何円増やしたかまでは分かりません。既存顧客の再購入、季節性、口コミ、自然検索の売上も総売上に含まれるからです。
| 見たいこと | 使う数字 | 分かること |
|---|---|---|
| 全体の費用効率 | MER | 総売上高に対してマーケティング費用が重いか |
| 特定の広告・キャンペーン | ROAS | 広告に帰属した収益と広告費の比率 |
| 獲得1件の費用 | CPA | コンバージョン1件にかかった費用 |
| 購入単価の変化 | AOV | 1注文あたりの平均売上 |
場面によって意味が変わる
同じMERでも、費用の範囲を変えると別の指標になります。比較する前に、集計ルールを固定してください。
| 集計の仕方 | 分母に入れるもの | 読み方 |
|---|---|---|
| 広告中心 | 各媒体の広告費 | 媒体投資全体に対する売上の戻りを見る |
| マーケティング全体 | 広告費、制作費、ツール費、外注費など | マーケティング部門の費用負担を広く見る |
| 新規顧客だけ | 新規顧客の売上と新規獲得に使った費用 | 獲得投資の効率を見る。全体MERとは別管理にする |
| 期間比較 | 月次・四半期など同じ長さの期間 | 季節性やキャンペーンの影響を含めて推移を見る |
Shopifyのレポートでも、売上・費用・ROASなどを期間やチャネル別に確認できます。一方、チャネル別の売上はUTMやアトリビューションモデルに依存するため、チャネルの合計をそのまま総売上とみなさないでください。
「広告費だけのMER」と「広告以外も含むMER」を、同じ名前のまま横並びにしないでください。前月と比べるときは、分子の売上定義と分母の費用項目を表にしてから数字を並べます。
高いときに、次にやること
MERが高いからといって、すぐに全媒体の予算を増やすとは限りません。高い理由が売上増なのか、費用減なのか、既存顧客や季節性なのかを切り分けます。
| 順番 | 開く場所 | 確認すること | 次の操作 |
|---|---|---|---|
| 1 | 売上レポート | 前期間と比べて総売上高が増えたか | 同じ期間を選び、売上の内訳を新規顧客・リピーター・商品別で並べる |
| 2 | マーケティング費用の集計表 | 分母に入れた費用項目が前期間と同じか | 広告、制作、ツール、外注の各金額をチェックする |
| 3 | チャネルパフォーマンス | 売上・費用・ROASがどのチャネルで動いたか | 変化したチャネル名をクリックし、キャンペーンまで開く |
| 4 | 利益率のレポート | 売上の増加が利益にも残ったか | 商品原価や値引きを含む利益率を確認してから増額判断をする |
全体のMERが高くても、特定のチャネルだけが赤字になっていることがあります。増額候補を決めるときは、上の表の3番目でチャネル名を開き、そのキャンペーンのROASとCPAを確認します。
低いときに、次にやること
低下を見つけたら、MERの数字だけを直接直そうとせず、売上と費用のどちらが動いたかを分けます。
| 最初の判定 | 開く場所 | 確認すること | 次の操作 |
|---|---|---|---|
| 売上が減った | 売上レポート | 注文数、AOV、新規顧客、リピーターのどれが減ったか | 減った項目を商品別・チャネル別に絞り込む |
| 費用が増えた | 広告媒体のキャンペーン一覧 | 期間、予算、実績費用、ROASの変化 | 費用が増えたキャンペーンを開き、入札・予算変更の履歴を見る |
| 売上も費用も動いた | 期間比較レポート | 売上の変化率と費用の変化率のどちらが大きいか | 同じ期間のキャンペーン別ROASとCPAを並べる |
| どちらも説明できない | 集計元のデータ | 税、送料、値引き、返品、通貨、計上日が前回と同じか | 売上と費用の定義を固定して、同じ期間で再計算する |
特定のキャンペーンを止める・増額する判断は、全体MERだけではできません。まずマーケティングレポートで費用と売上の期間をそろえ、次にキャンペーン名を開いてROASとCPAを確認します。
注意点
MERは全体を見るのに便利ですが、原因の特定や利益の判定を1つで済ませる指標ではありません。
| 注意点 | なぜ起きるか | 確認するもの |
|---|---|---|
| MERとROASを足し算する | MERは全体、ROASは広告に帰属したチャネル単位で分母・分子が違う | 総売上高、総マーケティング費用、各キャンペーンのROASを別々に見る |
| 高いMERを利益と読む | 売上から商品原価や手数料を引いていない | 粗利率、限界利益、決済手数料、返品 |
| 月初と月末で判断する | 売上と広告費の計上タイミングがずれる | 同じ締め日の期間、注文日・入金日・広告費計上日 |
| 予算を増やせば同じMERになると考える | 投資額が増えると限界効率が変わることがある | 予算変更前後の売上、費用、ROAS、CPA |
まず、集計表で「総売上高の定義」「総マーケティング費用に含める項目」「対象期間」の3列を固定します。そのうえで、売上レポートとマーケティング費用の明細を同じ期間にして、MERを再計算してください。