30秒で理解
回収期間(Payback Period)は、顧客獲得費用を何カ月で取り戻せるかを表します。通常は、新規顧客1人あたりのCACを、その顧客が1カ月に生む粗利で割ります。
短いほど、獲得に使った資金を早く次の獲得へ回せます。ただし、短いから自動的に良いとは限りません。顧客の解約が早い、または分子に広告費しか入れていない場合は、実態より短く見えます。
先に払った入場料を、毎月の売上から少しずつ取り戻すまでの月数です。入場料だけでなく会場の運営費も引いた残りで返すため、売上ではなく粗利を分母に置きます。
計算式と計算例
まず、対象期間の獲得関連費用を新規顧客数で割ってCACを出します。次に、顧客1人あたりの月次売上から、提供・サポートなど顧客に直接かかる月次コストを引いて月次粗利を出します。Stripeの日本語解説も、CACを顧客1人あたりの月次利益で割る形で説明しています。
| 項目 | 設定例 | 計算 |
|---|---|---|
| 獲得関連費用 | 300,000円 | 広告・営業・制作費など |
| 新規顧客数 | 30人 | 同じ期間に獲得 |
| CAC | 10,000円 | 300,000 ÷ 30 |
| 顧客1人あたりの月次売上 | 5,000円 | 月額料金など |
| 顧客1人あたりの月次コスト | 2,000円 | 提供・サポートなど |
| 月次粗利 | 3,000円 | 5,000 − 2,000 |
| 回収期間 | 3.33カ月 | 10,000 ÷ 3,000 |
この例では、平均して約3.33カ月分の粗利でCACを回収します。月の途中で解約した顧客や無料期間中の顧客を含める場合は、同じ期間の顧客群で実際の累積粗利も並べて確認します。
この数字が表すもの
回収期間が表すのは、顧客獲得に先に出した資金が、顧客から生まれる粗利で戻るまでの速さです。長期的にどれだけ価値を生むかはLTV、獲得費用に対して価値が何倍かはLTV/CACで見るため、役割が異なります。
| 見えている状態 | 読み取れること | 一緒に見る指標 |
|---|---|---|
| 回収期間が短い | 獲得資金を早く再投資できる | 解約率、顧客群別の粗利 |
| 回収期間が長い | 資金が長く顧客獲得に拘束される | CACの内訳、月次粗利 |
| 回収期間が急に伸びた | CAC上昇、粗利低下、請求開始の遅れなどが起きた可能性 | チャネル別CAC、売上・コストの月次推移 |
| LTV/CACは高いが回収期間も長い | 長期価値はあっても、先に必要な資金が大きい | コホート別の累積粗利、キャッシュ残高 |
場面によって意味が変わる
分子と分母の範囲を変えると、同じ「回収期間」でも比較できない数字になります。少なくとも顧客群、チャネル、集計期間、粗利に含めるコストを列名に残します。
| 場面 | 分子 | 分母 | 注意すること |
|---|---|---|---|
| サブスクリプション | 営業・マーケティングの獲得費 | 月次売上 − 提供・サポート費 | 無料期間と請求開始月をそろえる |
| EC・単発購入 | 新規顧客の獲得費 | 顧客1人あたりの月次または期間粗利 | 1回購入だけなら「月数」の意味を定義する |
| チャネル比較 | そのチャネルのCAC | そのチャネルの顧客群の粗利 | 制作費・人件費を含める基準をそろえる |
| B2B | 営業・マーケティングの獲得費 | 契約ごとの月次粗利 | 契約開始、導入費、請求開始の時点を分ける |
高いときに、次にやること
回収期間が長いときは、いきなり広告を止めず、CACが高いのか月次粗利が低いのかを分けます。次の表の順で、同じ顧客群を固定して確認します。
| 順番 | 開く場所 | 操作 |
|---|---|---|
| 1 | 顧客・売上分析のコホート表 | 初回獲得月とチャネルを1つ選び、顧客数・売上・継続月数を表示する |
| 2 | 販売・マーケティング費用の明細 | 同じ期間・チャネルの広告費、営業費、制作費、ツール費を開く |
| 3 | 顧客別の粗利表 | 月次売上から提供費・サポート費などを引いた列を開く |
| 4 | キャンペーン別レポート | CACが高いキャンペーンを費用・新規顧客数・回収期間で並べ替える |
| 5 | 解約・継続レポート | 回収前に解約した顧客の割合を同じコホートで確認する |
CACだけが上がっていれば、費用の増えたキャンペーンと新規顧客数の変化を確認します。月次粗利だけが下がっていれば、値引き、プラン構成、提供コスト、無料期間の長さを開きます。回収前の解約が多ければ、平均値ではなくコホートの累積粗利で判定します。
低いときに、次にやること
短い回収期間を見つけても、全チャネルへ予算を移す前に、その顧客群が十分な件数で再現しているか確認します。少数の高額契約だけで短く見えることがあるためです。
| 状態 | 開く場所 | 次の操作 |
|---|---|---|
| CACが低く、粗利も安定している | チャネル別コホート | 同じチャネルを顧客数・解約率つきで月別に並べる |
| CACが低いが粗利が低い | 商品・プラン別売上 | 値引き後の売上と提供コストを開く |
| 回収後に解約が増える | 解約・継続レポート | 回収月の前後で解約率を比較する |
| 件数が少ない | 顧客・売上分析 | 直近1カ月だけでなく複数コホートを選ぶ |
最初に開くのは、顧客・売上分析のコホート表です。回収期間が短いチャネルを1つ選び、顧客数、月次粗利、解約率を月別に表示してから、広告管理画面の予算変更候補を1つに絞ります。
注意点
回収期間をLTV/CACの倍率や利益そのものと読み替えないでください。回収期間は時間、LTV/CACは比率です。また、売上から原価や提供費を引いていない分母で計算すると、実際より早く回収したように見えます。
| 落とし穴 | 起きること | 確認する列 |
|---|---|---|
| 売上を分母にする | 提供コストを無視して短く見える | 顧客1人あたりの粗利、提供・サポート費 |
| 広告費だけでCACを出す | 営業・制作・ツール費が抜ける | 獲得関連費用の内訳 |
| 全体平均だけを見る | 高いチャネルと低いチャネルが隠れる | チャネル・顧客群・コホート |
| 回収前の解約を無視する | 平均回収期間が顧客の実態を表さない | 回収月までの継続率・累積粗利 |
| 業界の目安だけで合否を決める | 顧客単価・契約期間・資金事情を無視する | 自社の目標期間とキャッシュ残高 |
最後に、同じ顧客群の「CAC」「月次粗利」「回収前の解約率」を1枚の表に並べます。次に押す場所は、回収期間が伸びた原因に応じたキャンペーン別レポート、商品・プラン別売上、または解約・継続レポートです。